メディアのプロパガンダを超えるには?

2018年6月10日、ソブリンマネーの国民投票日、ベルン駅のすぐ脇にあるレストランでイニシアチブの参加者たちのパーティがありました。

 

お昼すぎ、投票結果がおよそ判明したころ、オープンテラスでエノ・シュミットさんやトーマス・マイヤーさんとおしゃべりしました。

「うーん、結局、ベーシックインカムもソブリンマネーも25%」

「新しいことを受け入れることができる人が4人に1人だと言うことだね」

「いや、自分で考えて判断できる人が4人に1人」

 

今回のソブリンマネーのイニシアチブは、議会は上下両院ともほぼ全会一致に近い票で反対が可決され、もちろん政府も反対。政党はグリーンだけが自主投票で他の政党は一致団結して反対キャンペーンを展開しました。同じこと日本でやったら、どれくらい賛成が得られるか?とっても厳しいでしょう。

 

その反対派の統一スローガンは、

Risky Expensive Damaging

 

彼らは決して、どうしてこのイニシアチブが危険で費用がかかり損害を与えるかと言う論理的な理由を述べることはありません。ただ「どこでもやったことがない」から危険。あとは根拠のない推測に過ぎない。

 

では実際にソブリンマネーが導入されたらどうなるのか?

これまで商業銀行が信用創造で発行した通貨はすべて中央銀行からの借入に転換されます。これまで株式会社として私的な利益追究のために通貨を発行してきた銀行は、以後通貨を発行できなくなり、必要な資金はどこかから調達してこなければいけない。この環境で金融危機がおこるというのは、まさに中央銀行が貸付を拒否した場合だけだし、彼らがそう判断して商業銀行が支払不能になっても、私たちの預金は商業銀行のバランスシートから除外されているので完全に安全です。こういう仕組みが導入されれば、きっと、世界中の人たちがスイスの銀行にスイスフランの預金をもちたがるに違いありません。さらに、これまでやってきた中央銀行の金融政策をそのまま継続することになんら問題なく、ここ最近やっているように、中央銀行がどんなに民間企業の株を買ってもいいし、マイナス金利で景気の調整を放棄しても構わない。これで一体どこが、リスキーでエクスペンシブでダメージングなのか?

 

こんな議論をしたら反対派はいとも簡単にイニシアチブ側に論破されてしまい、実際にスイス国内の討論番組や特集記事では、おおむねフェアに報道されていたとイニシアチブの関係者は言います。

 

事前の世論調査では、最高で賛成が39%もあったし、直近でも34%でした。日本の選挙の経験だとサンプル数が1000あれば実際の投票とはほとんど誤差がない。でも、ブルーノ・カウフマン氏によるとスイスでは世論調査と投票結果に開きがあることは、珍しくないそうです。有権者が結果に責任をもたないといけない国民投票の場合は、単なる世論調査よりは確実に保守的な結果がでる。例えば今世界のあちこちでベーシックインカムの世論調査が行われていて、結果は5割前後が賛成というのがほとんどですが、スイスで結果がよりシビアなのは、投票に法的拘束力があって実行に移されるからと言えます。

 

今回は、面白いことに、通常、政治的なことには一切関与しないと言う不文律もつ中央銀行までが異例の反対声明を出しました。金融政策はここ数年うまくいっているので、新しいリスクファクターをやることはないと。もしこのイニシアチブが過半数をとったら中央銀行の権限は大幅に強化されると言うのに・・・。これは、今の銀行業界全体の構造を端的に示していると言えます。そして、統計的には世界で10年に1回は何らかの金融危機が起きて、今、リーマンショックからちょうど10年ですね。あの頃私は「金融崩壊後の世界」と言う本を出して、それから、ありゃりゃなかなか来ないなと思っていたのですが、そろそろなのかも知れません。スイス政府が今回急いでこの案件を国民投票にかけたのは、金融危機後に行われたら取り返しがつかない結果となると判断したからという声も現場ではありました。

 

夕方、みんなで食事をして別れて、シモン・センリッヒのシェアハウスに戻りました。サマータイムの遅い日没もやってくる頃、テラスにルームメイト達が集まって話しをしました。

 

「たくさん恐れや不安を刷り込まれると、人は支配さるようになって、いうこと聞いちゃうんだよね。それが決して自分のためにもならないことでも」

「生まれたばかりの頃って、誰も不安なんかもってない。でも、その後の教育や、日々与えられる情報でそうなっちゃうんだ」

翌日、チューリッヒでカウフマン氏とランチしながら言いました。

「また25%。もう、ハッピールーザーは嫌なんだ。いったいどうしたら過半数とれるんだろう?」

「まだ2回目だろ。俺なんか、何百回も負けているんだよ。こんな社会を根本から変えるようなレファレンダムが簡単に過半数とれるはずがないよ。もっと簡単なのはけっこうある」

 

あと25%、どうしたらいいんだろう?

 

エスタブリッシュメントのやってくることって、まぁ、ワンパターンで、恐れや不安なを煽る単純なフレーズをボリュームたっぷりにくりかえすだけで、それに理路整然と反論しても、ラチは開かないんですよ。

 

何はともあれ、反対派の手口はいつも単純なんだから、対策の取りようはあるわけで、あと25%確保する戦略こそ、新しい社会をつくるカギになります。

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