実は金融危機は怖くない  その1

リーマンショックから10年が経ちました。その翌年「金融崩壊後の世界」という本を出したのですが、あれからいまだに金融危機は来ていません。でも、その周期は10年だという説もあり、そろそろじゃないかという気もします。スイスのソブリンマネーの国民投票のパーティでも「政府は次の危機の前にやらないとたいへんなことになるから、今回、国民投票を急いだんだ」という声もあって、それは十分ありえることだと思いました。今、イタリアの国債の下落も気になるところです。

それと同時に私がヨーロッパに通い出してから3年になります。バーゼルについた日は、ちょうど11月13日金曜日、初めてのエノシュミットさんのインタビューを終えてホテルに入ったらパリで大きなテロがあり、翌日レイキャビックに向かうのに随分と空港で待たされたことを覚えています。

そして到着したアイスランド。とにかくその独特な自然に魅了されながら、リーマンショックが引き金となった経済破綻とダイレクトデモクラシーによる復活について調べました。

この写真は、ギャオと呼ばれる溝。大西洋のど真ん中でプレートがぶつかってできた溝がアイスランドだけ地上に隆起しています。そして、この場所は、西暦930年に世界初の民主議会(アルシング)が行われた地とも言われています。その議会も誰でも参加できて心おきなくディスカッションできるものでした。

その時書いた原稿は、「ダイレクトデモクラシー」というeBookの中にあります。

昔、「時代の5歩先を歩いてもつぶれない」をモットーに生きるんだと言ってましたが、まずは3年前に書いたこの原稿、そのまま掲載します。

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経済危機をダイレクト・デモクラシーで乗り越えたアイスランド

 

ポルトガルの映画監督であるミゲル・マルケスさんのアイスランドの無血革命のドキュメンタリー、「Pots, pans and other solutions」に衝撃を受けて昨年11月にアイスランドを訪問してきました。マルケスさんやこの映画の日本語字幕をつくった方から情報を頂きながら、フェイスブックで映画の登場人物達を見つけて連絡をとってお会してきました。

 

①史上最悪な経済破綻

 

2008年、サブプライム問題に端を発したリーマン・ショックのあおりを受ける形でアイスランドの主要銀行が破綻します。

9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻すると、29日にはアイスランド3位のグリトニル銀行が破綻、アイスランドの通貨クローナは暴落します。10月6日には、政府が非常事態を宣言し、議会はアイスランド国内の全銀行を国有化する法案を可決、証券取引所の取引も停止されました。10月24日にはIMFによる21億ドルの緊急融資が決定されます。

この経済破綻は、経済規模を考慮すると歴史上最も深刻なものでした。エコノミスト紙は「マンモスのように巨大な債務の返済にアイスランドの30万人の人々は直面した」と伝えました。外貨建ての住宅ローンの負担が一挙に増えたために、多くの人が家を失い、食糧配給に長い行列ができました。

アイスランドは北海道と四国をあわせた程の国土に人口はわずか35万人の国です。レイキャビクは首都としては世界最北の北緯65度に位置していますが、海流と偏西風のお陰で寒さはあまり厳しくなく、冬でも零下数度にしかなりません。この国は、一人当たりのGDPは世界トップレベルで、世界でもっとも汚職が少ない国と言われ、女性の社会進出もすすみ、治安がよく犯罪率も低く、北欧の国々のように福祉国家としても充実しています。また、軍隊をもたない国としても知られています。これは1918年、デンマークから独立した際に非武装中立宣言を行って以来のことですが、途中、デンマークがナチスドイツに占領されたことをきっかけにイギリス軍、次いで、米軍が駐留しました。第二次世界大戦後、NATOに加盟し、米軍はケフラヴィク基地を維持していましたが、2006年、米軍の世界再編の一環として完全撤退しています。

アイスランドは火山国としても知られ、その熱エネルギーを有効利用し、地熱発電と水力発電と合わせると電力はほぼ自給できていて、さらに各家庭に温水が供給されて暖房がまかなわれています。

 この国の産業はもともと水産業が主体でしたが、水力と地熱発電で電力が安価で大量に供給可能なことから、これを利用して、90年代から外国からの投資でアルミニウムの精錬事業がおこりました。これをきっかけに国外資金の流入が始まります。この時期からアイスランドはスイスやアイルランドを手本にした金融立国を目指し、法人税の引下げや、資本移動の自由化、銀行の民営化、為替の変動相場制への移行を行いました。金融機関がこうした制度を利用して海外で社債を発行して資金を集めて投資を始めます。集めた資金は、まずは国内の不動産投資に向けられ、不動産価格が上昇すると、海外投資家達もこれに乗り出し、結果として通貨クローナも上昇します。やがてアイスランドの銀行は、強いクローナを武器に、海外投資を積極的に行いますが、同時に一般国民も、低金利の外貨建ての借入れを使って、消費を行うようになりました。インフレと経済の過熱を避けるために、金利が引き上げられましたが、これによって更に資金は集ったのです。その結果、アイスランドの銀行の資産規模は、GDPの10倍以上に達しました。
(つづく)

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